というよりも、ルールブックの添付シナリオ2『訪れし混沌』を褒めたたえる文章です、はい。
ネタバレになるけど、知ってる人と、知らないけどやる予定がない人しかもういないだろうし、別にいいよね?
さて、当シナリオ『訪れし混沌』は、所謂ギミックボス型のシナリオの亜種です。
ギミックボス型とは、クライマックスにおいて仕掛けられた謎を解く/手順を踏まないと勝利条件を満たせない形式のことです。
このシナリオにおいてPC達を苦しめる混沌は、強力なモンスターではなく、単純な戦闘力では対処できない津波という自然現象です。
60ラウンドという制限がある中で、村人をどうすれば津波から守れるのかがクライマックスで問われます。
単純な武力では解決しない問題が出てくるのは、クリスタニアの現状からすれば非常に「らしい」。
とはいえ、クライマックスまでに混沌退治という名目で村の近隣を巡らされ、ある程度利用できる地形が提示されているので、どうすればいいか全く思い浮かばない、なんてことはないでしょう。
それに、普段使わない直接戦闘に寄与しない魔法が活躍するチャンスです。
普段は該当PLしか見ない呪文リストを、PL全員で眺めることになるのも良い。
みんなで頭を捻る分、ソーサラーやシャーマンばかりが活躍するなんてこともないでしょう。
他にも、普段恩恵を感じにくいウォーク系のタレントに出番があるのも良いところ。
総じて、クリスタニアってこういう風に遊んでもいいんだっていうのを教えてくれる、このゲームを象徴するようなシナリオだと思います。
ところで、このシナリオの肝は、何といっても封印されていた混沌が津波だということに他ならない訳で。
単純な戦闘以外をクライマックスに持ってきても、「混沌ってそういうものだから」と、自由な発想を世界観がフォローしてくれます。
それは、混沌をどうデザインするかがシナリオの出来に関わってくるということ。
そして、この『訪れし混沌』メソッドを使えば、誰でも簡単に、それこそルールブックからPCのレベルに合わせて適当にモンスターを引っ張ってくるだけでもクリスタニアっぽいシナリオにすることが出来るのです、多分。
このメソッドにおいて気を付けることは3つ。
端的に言えば、混沌による被害を肉付けしよう、という話。
ただ「妖魔が暴れて困っています、退治してください」だと、中々PLのモチベーションも上がらない。
特に、金銭報酬が発生しにくいクリスタニアではなおさら。
そんなわけで、発生した混沌によって危機的な状況が発生していることは、しっかり描写しておかないとしょっぱいことになるでしょう。
例えば、ゴブリンが出てくるとしても、そいつらに水源を抑えられてしまい飲料水が不足している、とか。
でもこれは、クリスタニアに関わらず、RPG全般に言えることですけど。
単に、戦闘に勝利すればそれで万事解決にならない、ってだけの話です。
『訪れし混沌』では、他の戦闘がブラフで、本命が戦闘外の災害という構造でしたが、そこまではする必要もなく。
さっきのゴブリンの例でいえば、水源を抑えたゴブリンは駆除したが、汚染されてしまっていて飲料水の供給は回復しなかった、とか。
ただし、これは別に解決しなきゃならない問題ではないのに注意。
PCがとんちを利かせて解決すればそれに越したことはないですが、村人が村を諦め移住をする、というだけでも、クリスタニア的にはドラマが広がる展開。
事前に保守的なNPCと頭の柔らかいNPCを出しておけば、最低限のシナリオのボリュームは確保できる、はず。
やり過ぎて勝利の爽快感を損なわないようにすることにはご注意を
『訪れし混沌』では、60ターン以内に津波の対処を行うというある種のギミックボスがクライマックスです。
ここまで特殊なシチュエーションを考える必要はないですが、シンプルなリソースの削り合いに一つまみ、想像力を要求するようなギミックを仕込むことは他のゲームにおいても割と重要だと思う。
そんなに難しく考える必要はなく、罠、奇襲、防衛線、時間制限、人質解放、地形利用...etc..、ちょっとした状況を戦闘に取り入れるだけで、PLが戦術を練ろうとする動機付けには十分。
その戦術を練る過程で、何だかんだでクリスタニアを取り巻く状況を考えざるを得ないので、パーシャルビーストしなくてもクリスタニアやってる気分になれますよ。
……どうでしょう、『訪れし混沌』メソッド。
「こんな混沌はどうだろう」とか考えてみたくなりません?
これ書きながら自分でも混沌を考えてみたんですが、疫病をまき散らす混沌なんかどうでしょう
これだけでも、ある程度シナリオが作れますね?
疫病が流行っているからと獣の牙に要請が来る、疫病とどう戦えばいいんだと思いつつ現地に向かえば、疫病をまき散らす物理的な存在がいるので、まあ倒す。
倒しても、疫病は消えず、村人(及び、PC)は苦しむ。
特効薬は混沌の死体から作れることが、悟りの民の協力で判明する。
いざ、倒した混沌の所に戻れば、そこは腐海と化していて……とか。
病気にかかって生き残った動物の肉を食べておけば予防できるのが分かるけれど、村人は誰も信じなくて……とか。
シナリオタイトルは『疫病の乙女』……駄目ですかね?
余談になりますが、添付シナリオ1の『禁じられた毒』もクリスタニアを語るうえでは外せないシナリオです。
調査、推理ものなので、PLが躓いたらどうしようもないところとか、ラストが理由のない妖魔の襲撃とか、色々うーんと思わないでもない部分はあります。
けれど、PLとクリスタニア社会での毒に対する考え方の差や蛮族社会における価値観など魅力的な世界が描かれている点は『訪れし混沌』とはまた違った角度でクリスタニアの世界を描いています。
また、個人の心情を描くことにシナリオの焦点が当てられていて、そういうシナリオの描き方をクリスタニアRPGはしても良いんだ、と明確に示してくれたことは、自分がクリスタニアを好きになる切っ掛けでもありました。
クリスタニアはその世界観やリプレイ、小説から様々なイメージを膨らませることが出来ますが、それをどう描くかという一点においてはこの二つの添付シナリオはとても大きな意味を持っていると自分は考えています。
公式から、こういうシナリオが提示されていた当たり、30年前のゲームですが、やっぱ良いゲームだと思いますよ、クリスタニア。
文責1037
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